運動を始める前の「深呼吸」が最も大事な準備運動だとご存知でしょうか?
深呼吸は、単に酸素を取り入れるだけではありません。あなたの体のスイッチを「運動モード」に切り替え、パフォーマンスを最大化する魔法のスイッチなのです。
今回は、運動前の深呼吸がなぜ重要なのか、そしてどのように行えば効果的なのかを分かりやすく解説します。
1. 「交感神経」と「副交感神経」って何?
私たちの体には、自律神経というアクセルとブレーキのような役割を果たす神経があります。
- 交感神経(アクセル): 活動モード。心拍数や血圧を上げ、体を「戦う・逃げる」態勢にします。運動中はこちらが優位になります。
- 副交感神経(ブレーキ): リラックスモード。心拍数を下げ、消化や回復を促し、体を落ち着かせます。
2. なぜ運動前に「リラックス」が必要なの?
「運動するんだから、アクセル全開でいいんじゃない?」と思うかもしれません。
しかし、ここがポイントです。
現代人は、仕事やストレスで日常的に交感神経が優位になりがちです。体がガチガチに緊張した状態でいきなり激しい運動を始めると、以下のようなリスクがあります。
- 怪我のリスク増加: 筋肉が硬くなっているため、肉離れや捻挫を起こしやすい。
- パフォーマンスの低下: 体がスムーズに動かず、思ったような力が出せません。
- 心臓への負担: 急激な血圧の上昇は、心臓に大きな負担をかけます。
ここで「深呼吸」の出番です。
3. 深呼吸が副交感神経を呼び覚ます!
運動前にゆっくりと深い呼吸をすることで リラックスモードを優位にできます。
これは、いきなり全力疾走するのではなく、一度落ち着いてからスタートを切るようなイメージです。体がリラックスすることで、以下のメリットが生まれます。
- 筋肉の柔軟性アップ: 緊張が解け、筋肉が動きやすい状態になります。
- 血流改善: 体の隅々まで酸素が行き渡りやすくなります。
- 心の準備: 運動への集中力が高まります。
- スムーズな切り替え: リラックスした状態から運動モードへ移行することで、怪我なく、スムーズにパフォーマンスを発揮できます。
4. 効果的な「運動前深呼吸」のやり方
道具は必要ありません。運動を始める直前、たった1分でOKです。
- 姿勢を正す: 立っても座ってもOKですが、背筋を伸ばします。
- 息を吐ききる(重要): まず、お腹の底から「ふぅーっ」と息を完全に吐ききります。体の中の古い空気を追い出すイメージです。
- ゆっくり吸う: 鼻からゆっくりと息を吸い込みます。お腹が膨らむのを意識しながら、4〜5秒かけて深く吸います。
- 止める(任意): 1〜2秒息を止めます。
- ゆっくり吐く: 口から「ふぅーっ」と音を立てながら、吸うときよりも長く、6〜8秒かけて完全に吐ききります。
これを3〜5回繰り返してみてください。
まとめ
運動前の深呼吸は、あなたの運動効率を劇的に改善し、安全に楽しむための重要なステップです。
準備運動の一部として、ぜひ「深呼吸」を取り入れてみてください。心も体も整った状態でスタートすることで、いつもの運動がもっと楽しく、効果的なものになりますよ。
東京ヒップジョイントクリニック 理学療法士 磯﨑直道
