変形性股関節症とは
変形性股関節症(Osteoarthritis=O.A)とは、関節への負担が原因で起こる関節疾患(病気)で、軟骨の破壊及び軟骨と骨の変形をきたし、慢性の関節炎を伴います。 関節が痛むため、関節リウマチと間違えられやすい病気です。
変形性股関節症が進行し重症になると、関節の変形や運動痛、可動域制限等により、起立や歩行に大きな影響を与えるため、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を著しく低下させます。変形性股関節症は関節軟骨が変化し、摩耗により関節破壊をきたす疾患(病気)です。この病気は原因が明らかでない一次性股関節症と、何らかの原因により発症する二次性股関節症に分類できます。
一次性股関節症 = 欧米人に多い(国内の0.65~21%)
二次性股関節症 = 日本人に多い(国内の80%以上)
(*1)
二次性股関節症の原因の代表的なものには、先天性股関節脱臼(うまれつき股関節がはずれているもの)、臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)、関節リウマチ、外傷=けが(大腿骨頚部骨折・股関節脱臼骨折・骨盤(寛骨臼)骨折)などがあげられます。
※1 参考:「変形性股関節症診療ガイドライン2016」(日本整形外科学会・日本股関節学会)
変形性股関節症の疫学(病気の原因)
発症年齢は40〜50歳代、女性に多く、男性の7倍ともいわれています。
国内におけるX線診断による変形性股関節症の有病率(病気をしている人の人口に対する割合)は、1.0~4.3%と言われており、これを国内の人口で換算すると、およそ120万~540万人にも上ります(*2)。数字で見ますと、比較的多くの方が変形性股関節症であることがわかります。
日本の場合、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全が原因で長い年月のうちに変形性股関節症となるケースが90%を占めています。
先天性股関節脱臼は、幼児期のオムツの巻き方が原因で起こる場合もあり、最近は減少傾向にあります。
※2 参考:「変形性股関節症診療ガイドライン2016」(日本整形外科学会・日本股関節学会)
変形性股関節症の症状
変形性股関節症の症状は、大きく3つに分けられます。
- 疼痛(股関節周囲の痛み)
初期の場合、長時間歩行時・歩行後にだるさや運動開始時の痛みとして現れ、病期(病気の進行度)が進行するにつれて痛みは持続的となり、安静時痛や夜間(就寝時)痛が出現してきます。 - 運動制限(=可動域制限)
初期には運動制限は、著明ではありません。 関節の変形が進行するにつれて、股関節の動きの制限が著明になります(靴下はき・爪切りといった動作が困難に)。 - 異常歩行=跛行(はこう)
疼痛性跛行は、股関節の痛みにより回避(かばって)歩行をすることです。また脚短縮(硬性墜下性歩行)=足が短くなることによる、異常歩行です。
Q:立ち上がり、歩き始めに足の付け根が痛くなったりしませんか?
Q:靴下はき、爪切りは困難ですか?
Q:足の付け根が伸びにくくなったり、左右の足の長さが違ったりしませんか?
上記のいずれかあてはまる方は、要注意です。
変形性股関節症の病期分類(病気の重症度)
治療するにあたって必要なX-P(レントゲン)から股関節の病期(病気の重症度)分類のお話です。
a.前股関節症=臼蓋形成不全
軟骨破壊は最も軽い時期、臼蓋形成不全があり、骨頭が十分覆われていませんが、関節裂隙(関節のすきま)は保たれている状態をいいます。
b.初期股関節症
関節面の不適合、関節裂隙(関節のすきま)のわずかな狭小化や骨硬化(骨が硬くなること)・骨棘(骨のとげ)形成は認めますが、あっても小さい状態をいいます。
c.進行期股関節症
骨頭周辺、臼蓋底の部分に骨棘(骨のとげ)形成を認め、関節裂隙(関節のすきま)は明らかに狭小化するものです。骨硬化(骨が硬くなること)・骨嚢胞(骨の中に穴があくこと=空洞)などの変化や出現する状態をいいます。
d.末期股関節症
関節裂隙(関節のすきま)の消失や関節としての適合性が消失する状態をいいます。
変形性股関節症の治療法
変形性股関節症のように、主に軟骨がすり減って骨が変形してしまう病例には、手術治療として人工股関節置換術があります。
人工関節置換術は近年では手術時間も短くなり、術後の回復も早い手法となっております。
当院では人工股関節置換術に特化しておりますが、患者さんの意思を第一に尊重した加療をすすめ、お一人おひとりにあった治療を行うことが大切だと考えています。