変形性股関節症に対して行う代表的な手術法
変形性股関節症を始めとする股関節疾患に対して行う代表的な手術法は以下の5つです。
1. 筋解離術(軟骨組織手術)
股関節周囲の筋肉を部分的に切り離し、緊張をとることにより股関節にかかっている圧力を低減させる方法です。
これにより、痛みの軽減や、股関節の機能の改善効果が期待できます。
変形性股関節症の進行状況で最も軽度な「前股関節症」から少しずつ軟骨がすり減り始める「初期股関節症」に適応していますが、関節自体の形が治るわけではないので、将来的に症状が再発する場合も多いといえます。
2. 臼蓋(寛骨臼:股関節の屋根側)に対する手術
股関節の屋根にあたる臼蓋(寛骨臼)を削り、股関節にかかる負担を軽減し、痛みをやわらげる手術(骨切り術)には、以下の方法があります。
股関節の屋根にあたる臼蓋(寛骨臼)に対して行う手術(骨切り術)には以下の方法があります。
- 棚形成術(たなけいせいじゅつ)
- 寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)
- キアリー骨盤骨切り術
- ソルター寛骨骨切り術
臼蓋(寛骨臼)に対して行う骨切り術について個別に解説します。
棚形成術(たなけいせいじゅつ)
骨盤から板状の骨を採骨して、これを足りない臼蓋の部分に移植する方法です。
臼蓋形成不全が軽い「前股関節症」から「初期股関節症」の場合に用いられ、比較的手術侵襲が少ない点が特徴です。
寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)
臼蓋を含めた股関節周囲の骨(寛骨)を丸くくり抜き、回転移動させて足りない臼蓋を作る方法です。
「前股関節症」から「初期股関節症」の場合に用いられ、正常に近い軟骨のある臼蓋を作れる点が特徴です。
キアリー骨盤骨切り術
臼蓋の部分で水平に切り、横にずらすことにより足りない臼蓋を作る方法です。
「前股関節症」から「進行期股関節症」まで適応可能ですが、骨盤が狭くなるので妊娠の可能性がある女性への適応は慎重に行う必要があります。
ソルター寛骨骨切り術
臼蓋の発育方向を変える手術です。
先天性股関節脱臼治療後に臼蓋形成不全の残存する症例で、3-6歳児に対する処置として適しています。
3. 大腿骨(太もも側の骨)に対する手術
大腿骨に対して行う手術 (骨きり術)には以下の方法があります。
- 内反骨切り術(ないはんこつきりじゅつ)
- 外反骨切り術(がいはんこつきりじゅつ)
- 大腿骨前方回転骨切り術(杉岡法)
大腿骨に対して行う骨切り術について個別に解説します。
内反骨切り術(ないはんこつきりじゅつ)
大腿骨を切って内側に倒し、関節の適合性を良くする術式です。
大腿骨の付け根付近で三角形に骨を切り取り、股関節からはみ出した骨頭を内側に倒し、骨盤のくぼみにおさめます。
大腿骨頭の変形がなく、臼蓋形成不全が軽い場合の前股関節症、初期股関節症に適応します。
欠点は下肢長短縮(足が短くなる)及び外転筋筋力(足を外に開く力)の低下です。
外反骨切り術(がいはんこつきりじゅつ)
大腿骨を切って外側に倒し、関節の適合性を良くする術式です。
大腿骨の付け根付近で外側から三角形に骨を切除することで、骨頭を外側に反らして、骨盤のくぼみにおさめます。
大腿骨頭の変形を認める進行期股関節症、末期股関節症に適応します。
大腿骨前方回転骨切り術(杉岡法)
大腿骨骨頭を頚部軸を中心として前方に約90度回転させる術式です。
大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)に適応します。
4. 股関節固定術
股関節を動かないよう固定する術式です。若年者で末期の変形性股関節症の患者様に対して行われます。
関節を固定することで無痛性と固定性を得ることが可能であり、若年者の特に重労働従事者に適応します。
5. 人工股関節置換術
人工股関節置換術は、加齢や病気などの原因によって傷んだ股関節を人工関節に置き換える手術です。
手術後は、股関節の痛みや機能が劇的に改善されるため、健康だった頃の日常生活を取り戻すことができ、テニスやダンス、サーフィンといったスポーツを楽しむことも可能です。
※詳細は、人工股関節置換術のページで解説しております。
人工股関節置換術(THA)に関するよくある質問
関連する治療法
変形性股関節症を始めとする股関節疾患の手術療法は、股関節の痛みや機能の改善が見込めるため満足度の高い治療法です。
ただし、症状が軽い場合は、運動療法や薬物療法といった保存療法が選択され、痛みをやわらげ、進行を遅らせるのが一般的です。
詳しくは、保存療法のページで解説しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。