1.股関節のしくみ
股関節とはどういうものか
写真の模型図を参考に見ていただきますと、お椀の形をした臼蓋(きゅうがい)が骨盤にあり、ボールの形をした骨頭(大腿骨)がぴったりとはまりこむ構造になっています。
正常股関節レントゲン写真の骨頭は臼蓋で8割以上包まれていると言われています。ですから、股関節は球関節と呼ばれております。
股関節は下肢と骨盤を繋ぐ関節で、荷重関節(体重を支える関節)として重要な関節の一つです。 さらに股関節は強力な靭帯や多くの筋肉により包まれていて、非常に安定な構造となっています。 このために、立つ・歩く・走ると いった動作を安定して行えることになります。

また球関節であるために大きな可動域を持つことができ、スクワットやあぐらなど大きな可動域が必要な動作も行えることになります。

病的(病気)あるいは外傷(けが)を負った股関節では、この安定性と可動性が制限されることになるわけで、歩行はもちろん、更衣・靴下着脱・足の爪きり・車の運転・物の上げ下げ・階段昇降といった幅広い日常生活動作が制限されてしまいます。
股関節は下肢と骨盤を繋ぐ関節で荷重関節(体重を支える関節)として重要な役割をしています。
歩いている時には体重の3~4.5倍の圧迫力が股関節に加わり、走っている時には体重の4〜5倍に増加するとされていて、階段昇降、椅子からの立ち上がりでは、体重の6.2〜8.7倍の力が、さらに、床や低い位置からの立ち上がりでは、10倍の力が股関節にかかります。
普段の日常活動でさえも非常に高い関節力が生じます。この大きな関節力を分散させて関節を保護するためにこの安定した構造が必要となるのです。
2.股関節痛を引き起こす病気
変形性股関節症とは?
変形性股関節症とは、関節を滑らかに動かすために骨の表面を覆ってクッションの役目をしている軟骨が、何らかの原因によってすり減ってしまうために起こる病気です。
臼蓋形成不全症
臼蓋形成不全症をわかりやすく言いますと「骨盤側の臼蓋という部分=屋根の部分が発育不全(形成不全)」
本来あるべき屋根が足りないと言い換えるとわかりやすくなるかもしれません。
先天性股関節脱臼に起因する先天的(生まれつき)な要因の強いもの、または先天性股関節脱臼がなくても臼蓋の発育が不完全な後天的なものがあるようです。
つまり臼蓋(骨盤側)の発育が不良で小さく、大腿骨頭(だいたいこっとう)を十分に覆うことができない状態をいいます。

先天性股関節脱臼とは?
出生前および出生後(出生時)に大腿骨頭が関節包の中で脱臼している状態をいいます。脱臼という言葉は、本来ある場所から、違う場所へ移動してしまうことをいいます。
わかりやすく言えば股関節が生まれつき外れてしまっていることです。
発生率は出産1,000に対して1~3の割合(0.1%~0.3%)、男女比は1:5~9と女子に多いと言われています。
その原因は、複雑で色々な因子が関与していると考えられており、欧米人に比べてアジア人、特に日本人に多いといわれています。
その原因として人種的要因の他に、巻きオムツなどを使用し新生児の下肢の動きを妨げるような文化的習慣が我が国にあったことが大きく影響しているといわれておりますが・・・真意はわかりません。
全身関節・靭帯弛緩性(関節・靭帯がゆるい)、ホルモン分泌、遺伝的素因などが関与しているとされ、出産前の胎内異常位(お母さんのお腹の中)、出生後の股関節肢位等が関与していると言われています。

【執筆】狩谷哲 医師
東京ヒップジョイントリニック院長
日本整形外科学会認定整形外科専門医